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監督 脚本 撮影/編集/美術/音響効果/制作

GEN TAKAHASHI

 

映画監督、プロデューサー、作家。1965年 東京都新宿生まれ。

祖父は東映動画の創立者にして日本アニメーション映画のパイオニア・藪下泰次(『白蛇伝』『安寿と厨子王丸』『西遊記』など)。漫画家を志し、高校在学中に講談社ちばてつや賞入賞。以後、柴門ふみ、弘兼憲史に師事、アシスタントを務め、1984年、映画界に転向。東映東京撮影所の装飾助手として松田優作監督・主演『ア・ホ-マンス』でキャリアをスタートさせ、『心臓抜き』(1992年/日本映画監督協会新人賞ノミネート・NHK衛星放送映画劇場放送)で劇場映画監督デビュー。

監督代表作に『CHARON』(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞)、原作・乙一の100万部ベストセラーの映画化『GOTH』、『ポチの告白』等があり、いずれも各国に国際配給され注目されている。

2009年、ニューヨークで活動開始。同年公開の代表作『ポチの告白(Confessions of A Dog)』は、ニューヨーク日本映画祭で観客人気投票2位、日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞、2009年日本映画代表シナリオ年鑑に選出され収録、英国では国立美術館での特別上映のほかDVDがソールド・アウト等、国際的なヒットを記録した。

2015年、外務省後援、文化庁藝術振興基金助成作品として製作された終戦70周年記念映画『陽光桜-YOKO THE CHERRY BLOSSOM-』を最後に、監督名を「GEN TAKAHASHI」に改名。

2020年3月、脳内出血で倒れ、現在も右半身麻痺の後遺症治療が続く中、公開待機中の最新作『新章』『静かなる国』そして本作『名もなき絆』を連作。これまでの劇場映画監督作14作のうち5作品が国立映画アーカイブに収蔵されている。

「義」と切り結んだ、ゼロからの映画

 

監督 GEN TAKAHASHI

 

この映画『名もなき絆』は、日本が失った「義」とは何かを伝える映画である。「義」という言葉は英語に翻訳できない。語源は古代中国にあり、その感性はアジア民族が同質的に共有している。「義」は理論ではなく行動だ。そこに本作の映画作りの本質がある。

この映画はiPhone1台だけが機材で、照明どころかレフ板一枚ない。

さらに私は、昨年3月に脳出血で倒れて以降、後遺症を患ったことで、撮影も不定期で身体的に完全な状態ではないから、出演した役者たちが現場を手伝った。「キャメラと役者がいればシャシンは撮れる」という劇映画の原点回帰だ。歴史的に、どの国の映画もこういう原風景から始まっている。

2018年9月15日、オーディションの最終選考に残った27名の中から6名が本作に出演したのだが、最初から台本もないから撮影を始めても、いつ終わるのかは誰も知らない。私も知らない。

気がつけば撮影終了は2年後の2020年11月だった。撮影日数は台湾ロケを入れてもたぶん14日ほどだろう。自分の出番まで丸々2年かかった人もいるし、つながっているシーンの撮影で平然と1年くらい間が空いたりしたから、髪が伸びたり短くなったり衣装も違う。全員、適当。これでも映画が成立することをみんな学んだ。  

いまはすべてがデジタル化されて、昔なら最低限必要だったネガ現像以降の仕上げ作業がなんと1円もかからずに自宅で出来る時代だ。そもそもiPhoneは電話のはずで映画撮影の機材ではない。

映画はフィルムで作るべきなのだが、逆に本作を通して私は「義」の感性と映画作りを改めて切り結んだと思う。

8mmがデジタルになっただけで、自分の映画作りは原点に戻ったのだ。

だから本作は、私の映画デビューから3周(12年を3回まわって36年)後の「ゼロからの映画」なのである。まだ、続ける。

 

(2021年3月7日 初号試写に寄せて)

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